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「騒音対策」とは何ですか?

 皆様も耳にされた事があり、弊社の業務内容の一つでもある「騒音対策」に関する事柄を、本項で述べさせていただきます。本項をお読みいただいて少しでも騒音対策を御理解いただければ、大変幸いです。

「騒音」とは何でしょう?

皆様は「騒音」との言葉より、どの様な音を連想されますか?大きな音?ヤカマシイ音?機械の音?・・・・
それらだけではありません。全ての音が騒音に成りうるのです。

Wikipediaによると、オックスフォード英語大辞典では騒音の定義について「望ましくない音」と説明されているそうです。聞いた人が「望んでいない音」のすべてが騒音なのです。

身近な例として「隣の人のイヤホンから漏れてくる音楽」、「学校や幼稚園などから聞こえる子供の声」や、ファンの方々にとっては至福の音かも知れない「コンサートの音」などが騒音と言われる事があります。

以上の様に「騒音か否かは聞く人の主観」である事を認識されて騒音対策を考えられる事が、とても大切なのです。

「耳」は高性能な感知器

人は普段より耳で多くの声や音を聞いています。街中や交通機関の中でも、さほど御不自由がなく会話が行えている事と思います。
しかし、電話などではどうでしょうか?  お相手が街中や交通機関の中にいるなど、周囲がうるさいと先方の声が聴き取りづらかった経験は、ございませんか?

対面して会話をされている時は、無意識にお相手の方向や距離などを脳が認識します。  そして脳が自動的に判断して、お相手の声以外の音を意識しない様に対応して、お相手の声のみ聴きやすくしますので、雑踏の中での会話も御不自由なく行えます。 (「カクテルパーティー効果」と呼ばれる現象です)

しかし、電話では全ての音が同じスピーカから出ます。従って音ごとの方向性や位置情報が無くなってしまうので、脳がお相手の声とその他の音の振り分けが出来なるので、お相手の声が聴きづらくなってしまいます。
逆に言えば、人間は聴き取りたい音がある場合にはそれに注意を集中する事で「聴き取れる」のです。
それを「耳を澄ます」とか「耳をそばだてる」と言われています。騒音対策ではとても注意が必要な行為です。

ここで一服

虫の「声」は日本人とポリネシア人のみが聞こえる・・!? 「蝉しぐれ」や「虫の音(ね)」など、虫の鳴き声を表す言葉が多くあります。この様な虫の「声」が聴こえるのは、日本人とポリネシア人のみという事が医学的にも証明されたそうです。

日本人とポリネシア人は言語を認識する「左脳」で虫の鳴き声を受け止め、アジア系も含むその他の外国の人は騒音や音楽を認識する「右脳」で処理するそうです。

「虫の音(声)」は外国の人にとっては「騒音」なのかも知れません。
これは、母国語が日本語(ポリネシア語)の人とそれ以外との違いで振り分けられるとの事で、人種とは関係ないそうです。音の影響は大きいのですね。

「騒音対策」の極意

騒音対策の極意は、騒音が発生しない様にする事です。 騒音を発生させている機械などの中の、騒音の音源を特定して騒音が発生する機構を分析、解析等で騒音発生メカニズムを見つけて、そこの方式の変更や改善で騒音の発生を無くすか、減少させる事が最良です。騒音でロスするエネルギーも無くなり(減少も)、稼働費用などの削減になります。

しかし、これは理想的な対策で、実際には数々の要因が関係するなどで、実現が非常に難しく、発生騒音の大幅な減少などの効果が得にくいのも事実です。
上述の音源自体での騒音発生そのものへの対策が不可能な場合には、音の伝搬経路上で、伝搬の阻害や伝搬度合いを減少させる対策を行います。これが一般的に言われている「騒音対策」です。

対策規模と費用対効果

騒音対策は、発生源の近傍で騒音対策を行うほど対策での恩恵が受けられる範囲が広がり、費用対効果が高くなる傾向にあります。


音源の防音カバー、消音器、防音壁 < 建屋での対策 < 防音壁 < 受音者側での対策

適材適所が重要な「騒音対策」

音は「大きさ」(レベル)と「高い音、低い音」(周波数特性)で表されます。(楽器などでは音色が加わります)
騒音の伝わりは物質の3態(気体、液体、固体)のそれぞれを媒体とした方法があります。 音が空気中を伝搬する「空気伝搬音」、液中(水中)を伝搬する「液中(水中)伝搬音」、固体中を伝搬する「個体伝搬音」です。身近な例では、空気伝搬音は一般的な「音」で、液中(水中)伝搬音は「ソナー」や「イルカの交信」などがあり、個体伝搬音にはドアの「ノック」などがあります。
空気での伝搬を遮断する対策(遮音)では、必要な減音量が大きいほど、そして低い音ほど、質量を重くしたり、複雑な構造の方式で行い、消音器での対策では複雑な構造が必要となります。そして、音の特性や設置条件などにより使用素材や方法が異なります。

遮音や消音器での対策は空気伝搬音には有効ですが、個体伝搬音には効果がありません。個体伝搬音の対策には、音源(振動源)やその直近で「防振」を行って、固体中を伝搬する振動(音)を遮断する必要があります。液中(水中)伝搬音への対策は諸条件を考慮した遮音や防振や組合せにより行われる事と考えます。
この様に騒音の対策には、騒音の特性や伝搬経路を把握して、騒音の伝搬を効果的に阻害する素材や方法での対策が必要で、適材適所が大変重要です。

「騒音対策」の度合いは?

作業所内の環境保全などの様に「騒音を規制値以下に」と、目標値が定まっている場合にはその値以下にする対策を講じる事で「騒音対策」の目的が達成されます。

しかし苦情が出ている場合には、前述の様な「騒音か否かは聞く人の主観」と「聴き取りたい音に注意を集中して、聴き取る」を認識した「騒音対策」の実行が大切です。そして「騒音対策」の目的は、苦情をお持ちの方が「充分静かになった」と納得される必要があります。
(環境基準などの規制値以下である事も必要です)

時折「一番うるさい機械のみ対策する」など、段階的な騒音対策をご希望される事がありますが、苦情が絡んでいる場合には、対策後にお相手が「まだ聴こえる」、「まだうるさい」となる可能性があり、追加の対策を行っても「まだ聴こえる」、「まだうるさい」となってしまう場合がありますので、得策ではありません。
その様にならない為には、苦情をお持ちの方が「充分静かになった」と感じて「注意の的」から騒音が外れる様にする事が必要です。それには「格段に効果が感じられる騒音対策」を一挙に講じる事が得策です。そしてこの方法は、段階的な騒音対策より対策費用が結果的に抑制される事が多くあります。

ここでふたたび一服

聴き取られやすい? だから怖い「有意騒音」
「有意の音」との言葉をお聞きになった事はありますか?
字が示す様に意味を持つ音の事です。具体的には会話や音楽などが一般的に言われる有意の音です。

その反対が「無意の音」で、エアコンや鉄道の音の様に、音自体に意味を持たない音です。
鉄道の車内では、電車の走る音やエアコンの可動の音など、かなり大きな音が絶えず鳴っております。しかし、多くの方はそれほど苦には感じていませんし、その中でも眠ってしまう方もいらっしゃいます。これは「自分に関係ない音」と脳が判断して意識をしない様にしたため、聞こえにくくなったのです。(でも「うるさいな」と思ったとたんに、よく聞こえ出しますが・・・)

しかし、近くの方が携帯電話などで会話を始めたらどうでしょうか?! 周囲を気にして電車の音より充分に小さな声で話していても、その声が気になって不快になったとの御経験がある方もいらっしゃると思います。 この様に、有意の音は聞き取られるので「有意騒音」は怖いのです。 でも、日本人と外国人の虫の音の聴き方などの様に、「有意の音」とは何か?は聞く人により異なります。 「この音がうるさい」と思った人にはその音が「有意の音(騒音)」となってしまいます。その為に、レベル的には小さくても聴き取られてしまい、前述の様に「まだ聴こえる」となるので、「有意騒音」は本当に怖いのです。

「遮音」と「吸音」

空気伝搬音の伝搬経路の遮断するのが「遮音」です。(完全に「遮断」できれば透過する騒音は「0」になるのですが、現実には完全な遮断は「真空状態を作る」などが必要になり、非常に困難です)
遮音は、防音カバーでは「遮音材」で騒音源を覆います。防音壁では、騒音源を「遮音材」で囲って行います。

「遮音材」は音の特性や設置条件を考慮して選択されますが、一般的には重く、固く、音を通しにくい素材が使われます。音を「通しにくい」とは、音を「よく反射する」事になります。
覆われたり、囲われたりしていなければ、発生した騒音は広大な空間に拡散して行きますが、騒音対策により覆われたり、囲われたりすると内側に反射音が返り、内部で騒音が反響状態になります。連続して発生している騒音が多いので、反響音には新たな発生騒音が加わります。それが飽和状態まで繰り返される事となり、騒音対策を行った内部は、音源以上に大きな騒音に満たされてしまうのです。
この現象を「音圧上昇」と言います。
周囲への騒音の影響を減らす目的の対策で、内部での騒音を大きくしてしまい騒音対策の効果を低減させてしまう事は本末転倒です。

この「音圧上昇」の度合いを軽減する為に、防音カバーや防音壁の音源側(通常は内側)に「吸音材」を取付けて、吸音処理を行います。
「吸音材」も音の特性や設置条件を考慮して選択されます。一般的には軽く、軟らかく、音が内部に浸透しやすい素材が使われます。
浸透した音は吸音材内部での乱反射や、吸音材の素材を揺らすなどにより音響パワーを消費します。そして、その奥にある遮音材で反射して吸音材の中に再び浸透して、音響パワーの消費を繰り返す事で内側への反射音を低減させます。吸音材の代表格のグラスウールでは、一般的な密度32kg/㎥と厚さ50mmで、500Hz以上の反射音をほぼ無しにする性能があります。
以上の様に「遮音」と「吸音」は、騒音対策で常に組み合わされて使われる、密接な関係にあります。
この関係は「吸音型消音器」などでも活用されています。


まとめ

拙い文章でお読み辛い事も多々あった事と存じますが、最後までお読みいただきまして、大変ありがとうございます。「騒音対策」では上述の事柄以外にも多くの事柄があります。今後も事柄を増やしていく所存でありますが、現在の所は本項までとさせていただきます事のご了承をお願い申し上げます。


人間は「常により良い(好ましい)環境を求める我儘な生き物」です。そして社会環境の変化でも、求められる静粛性が変化しますが、その変化は必ず「より高い静粛性」を求める方向に変化いたします。これらも念頭に置かれて、騒音対策をお考えいただけます事をお勧めいたしまして、本項の中締めとさせていただきます。